注意すべきものは、排卵誘発の結果起こる、卵巣過剰刺激症候群と静脈血栓です。前者は放っておくと脳梗塞や心筋梗塞を起こす場合もあります。

 専門のドクターのもとで治療をしてください。現在では超音波検査や血液検査で事前に対処することができますし、薬の選択が広がって、排卵誘発できます。

 静脈血栓は妊娠時に非常によくできるもので、薬の副作用では頻度は少ないものです。血栓で怖いのは脳卒中や心筋梗塞などの動脈血栓であって、静脈血栓ではありません。

 その他、排卵誘発すると閉経が早まる、卵巣ガンが多くなるなどの声がありますが、そういう報告や証拠は現在はありません。


 本来膣内に射精される精子を採取して、人工的に子宮に注入し体内受精を促す方法を人工授精といいます。
 それに対して、体外受精と顕微授精は本来体の中で起こる受精現象を、人工的に体外で起こさせるものです。人工授精までは、精子と卵子の出会いを助けるだけですが、体外受精と顕微授精は卵子と精子を取り出して受精卵までつくってしまいます。
 一般に体外受精と呼んでいるのは媒精という方法で、採ってきた卵に精子をふりかけて、精子が自然と入っていくのを待ちます。そして受精卵ができて順調に分割したら、子宮に戻します。体外受精は、卵1個に対して10万から20万匹の動いている精子が必要です。
 顕微授精も正確には体外受精の一手法ですが、体外受精とは別に独立して呼ばれるようになっています。その違いは受精のさせ方です。
 顕微授精はその名の通り、顕微鏡下で卵の中に精子を1匹ピペットという細いガラス管で捕まえて注入し、受精卵が出来た後は、体外受精と同様に培養して子宮に戻してやります。
 顕微授精では、体外受精でクリアできなかった受精障害をはじめ、卵1個に対して精子1匹あればいいので、男性不妊の障害もかなりクリアできます。

 ICSIを何回、というのは普通の採卵の場合で、いわゆるロング法とかショート法、あるいはGnRHアンタゴニストを使った刺激周期のことを言っています。
 通常の体外受精・ICSIでは、採卵4回までに、7割以上の方が妊娠します。クロミッド採卵は、通常の卵巣刺激ができなくなった患者様を対象に行っています。
 実際に卵が採れた方は50歳近くまでいますが、当院で妊娠した最高年齢は47歳です。(この方は出産まで至らずに流産されております。)
無事出産までされた方は45歳で妊娠し46歳で出産されたのが最高齢です。
 クロミッド採卵をする方のうち何割かは早発閉経気味で、年齢は更年期になっていなくても、生理はあがってしまいそうな人です。いわばクロミッド採卵は、崖っぷちでなんとか踏みとどまり、妊娠できる卵の出現を待つものです。どんな治療も成功の保証はありません。いつまで続けるかも決まっていません。医学的には妊娠できる卵が卵巣からなくなった時がやめる時と思うのですが、それがいつかはわかりません。
 患者様の自己判断では、治療をしたことで後悔する度合いが、治療をしないことで後悔する度合いを上回った時がやめる時と思います。つまり、自分の後悔が一番少ない形で終了していただきたいと思います。しかし、それもメータがついている訳ではないので、当事者も判らないと思います。

 抗精子抗体、強陽性の場合は私の経験では、はじめからICSIの方がよいと思います。不動化抗体が、卵や卵のまわりの細胞にも付着しているのでないかと思います(当然一生懸命きれいに洗いますが)。

 私は、患者さんの事で迷ったとき、どちらが親切か考えています。私が強くICSIを勧めたならconventional(ICSIでない方法で、卵子に精子をふりかける従来のやり方)であまり勝算がないためと思われます。何十万円かかけて受精障害で受精卵ができず、次の日に「残念でした」「妊娠のチャンスは今回全くありません」と私は平気で言えません。
 少なくとも現在の私の方針は、初回ではconventionalとICSIをひとりの患者さんに同時に行っています。受精障害が判明し、conventionalでひとつも受精卵ができなくても、ICSIでちゃんとその回の移植分の受精卵は確保したいと思っていますし、その方が私は親切と思っています。間違っているでしょうか?何十万も払っても全くチャンスがなく、受精障害の検査だけで終わって、納得できるのでしょうか?私なら治療ですから怒ります。
 受精障害は意外に多いと思います(約2割の方にみられます)。特に精子の数もちゃんとあるのに、人工授精で妊娠できなかった人々に多くみられます。「今回は受精卵ができませんでした」と患者さんに説明し、がっかりした顔を見るのは、私には耐えられません。できる限りのことをするという事で、今は初回の人に対しては両方で対処し、conventionalのみは原則として行っておりません。受精障害がなく、conventional希望ならいつでもお受けします。その方がICSIをやるよりもずっと楽ですから...。
 名大時代は、One day old ICSIといって受精障害のわかった採卵翌日に、1日遅れのICSIをしていた事もあります。これは何年も前に中部不妊学会で発表しましたが、受精率は変わりませんが、妊娠率は3分の1に落ちます。1日のずれで着床率は大きく変化します。しかし、当時はやってあげた方が親切だと思っていたので、行っていました。でも、現在のように両方行うほうが妊娠率も確保し、しかも受精障害もわかり、私にはより親切な方法と思えます。私はそもそも何回も体外受精を行うべきではないと思っています。
 その都度ベストでありたいと思っています。「1回入魂」です。受精しなかったらまた次の回でというのは、ある意味無責任だと思います。誰も無駄にお金や時間を使いたくありません。妊娠のチャンスをみすみすなくす事もないと思います。結果がでない治療はやがて消え行く治療法です。でも、最近はインターネットや雑誌でにわか勉強し、洗脳された患者さんたちに真のエビデンスを伝え、説得するのに少し疲れたところはあります。30分もかかって説得するより「本人がそう信じているのなら、それでよいではないか」という気にもなってきました。ベストな治療でなくても患者選択を第一とすべきか時々悩んでいます。
 何年も不妊治療を行っている間にだんだん独善的で、傲慢になってきたかもしれません。反省します。

 精子の量は、けっして少ないとは思いません。顕微授精は、卵と同じ数だけの運動精子がいれば十分です。
 顕微授精では、どんな精子でも70%以上の受精率が常識です。
 あまりに受精率が悪いので、顕微授精の技術レベルが臨床応用するまでにいたっていないと思われます。(先方には失礼ですが、私は顕微の専門家ですので、きびしい見方をします)

 大変大きいと思います。
 いろいろなレベルのいろいろな考えの先生がいて、いろいろなレベルの培養室・培養師を使って体外受精を行っています。体外受精・顕微授精というのは流派がいっぱいあり、出身大学、勉強してきたところなどバラバラで、そのクリニックのこだわりも違います。
 また、施設によってその設備の質も異なります。

 効率は悪いですが、―匹の精子でも可能です。

 不動精子でも可能ですが、成績がよくありませんので、できれば運動精子を手に入れたいと思います。

 現在生まれている赤ちゃんの65人に1人以上は、体外受精で妊娠した子です。女性にとっていろいろな不妊治療よりも何倍、何十倍も危険で体に悪いのは妊娠です。
 妊娠に比べたら治療は取るに足らないものです。あと数年もしないうちにあなたは排卵しなくなり、妊娠は不可能になります。
 卵巣の老化はどんどん進みます。一般的に35才から妊娠率は下がり、一般的に41~42才で妊娠不可能になります。もっと早く不可能になる人もいっぱいいます。

  ICSI(顕微授精)で受精率は確実に上がりますが、卵の質を上げる事はむずかしいです。



               
               
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