基礎体温は参考にならないの?

 基礎体温表は不妊治療の基本でした。20年位前は不妊治療はまず基礎体温のつけ方から始まりました。しかし、不妊治療は大きく変わり、治療法も全く変わりました。
 1978年にIVF(体外受精)が始まり、1992年にICSI(顕微授精)が始まりました。
それまで妊娠できないと言われてきた人々が妊娠可能になりました。それに伴い直接、卵胞・卵子・受精卵を見ることができるようになり、不妊症治療の考え方が大きく変わってきました。私に言わせれば、基礎体温表を見ながら「排卵していますね」「ここで排卵です」と言っているのは古典的不妊症学だと思います。
 基礎体温というのは、黄体ホルモンの違いで微妙に変化する体温を捉える、いわば机上の理論体温です。皆様が口の中で測っているのは、安静時口腔内体温です。これは夜中の行動(眠りの深さ・トイレ・布団をかぶっていた・□をあいていた・鼻がつまっていた等々)で当然変化します。部屋の冷暖房でも、もちろん変化します、したがって、そんな曖昧なものに全力を注いでもしょうがない、と私は考えています。ましてや体温は毎日上がったり下がったりします。下がるたびに排卵かと思わなければなりません。そのため、多く の人にとっては排卵の予知には利用できません。後で見てこの辺だったという事が言えるだけです。経腔超音波がでてきたのが15~20年位前ですが、"実際の排卵と体温上昇は、3日位ずれがある事もよくあることだ"という学会発表も当時はされていました。排卵がうまくいかない(LUF:黄体化非破裂卵胞)ことはよくありますが、体温はちゃんと二相性になります。
 要は赤ちゃんまでいける元気な受精卵ができた時に妊娠できるわけです。普通に夫婦生活があり、排卵期1週間に2~3回性交があれば卵管内にはいつも生きた精子がいるはずで、大きくタイミングをはずしている人は少ないと思います。2年以上避妊なしで妊娠していなければ、タイミングがあっていないのではなく、それ以外の何かがうまくいっていないから、それが原因で妊娠しないと考えた方がよいと思います。
 LUF、ピックアップ障害(卵管へうまく卵が行けない)、受精障害(精子と卵子が出会っても受精できない)、受精卵自体が悪い場合、着床障害(うまく子宮に着床できない)など、いろいろ原因が考えられますが、その多くは体外からはわかりません(一部は体外受精で確かめられます)、ですから、治療法を変えていって、その結果で判断するステップアップ治療が、不妊症の治療の基本になります。したがって妊娠しにくい方は、タイミングでゆっくり時間をつぶしていてはいけません。タイミングでは妊娠できない、あるいは非常に確率が低いと認識した方がいいと思います。
 古典的な基礎体温に縛られるのはいいですが、ふた昔前の医学でストレスにならないように注意して下さい、不妊治療は、ここ20年最も進歩した医学だと私は思います。今でもすごい勢いで進歩を続けています。何が重要か、何か大切でないかを見極めることも大切だと思います。 

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